品川の原美術館跡地は、完全予約制でアートと建築にじっくり向き合える特別な場所へと生まれ変わりました。
この記事では、昭和初期の美しい建築空間で現代アートを堪能し、その後は江戸の面影が残る坂道を散策する「アートと坂を巡る高輪さんぽ」の半日モデルコースを、私の体験をもとにご紹介します。
忙しい日常を忘れ、五感を満たす週末を過ごしたい方は、ぜひ参考にしてください。
この記事でわかること
- 原美術館ARCの歴史的建築と現代アートの魅力
- 完全予約制で静かに鑑賞する特別な体験
- アートと坂道を巡る高輪さんぽの半日モデルコース
品川の原美術館跡地、アートと坂を巡る特別な散策路へ
多くの人に惜しまれつつ閉館した原美術館ですが、その跡地は現在「原美術館ARC」として、特別な鑑賞体験ができる場所へ生まれ変わりました。
ここは単なる美術館ではなく、アートと建築、そして周辺の街並みが一体となった豊かな時間を過ごせる散策路の出発点です。
この場所がなぜこれほどまでに心を惹きつけるのか、その魅力を3つの視点からお伝えします。
建築とアートが調和する静寂の空間
原美術館ARCの建物は、もともと昭和初期に建てられた個人邸宅を改装した美術館です。
建築家・磯崎新氏によって手がけられた空間は、優雅な曲線を描く階段や中庭から光が差し込む展示室など、建物そのものがアート作品のような佇まいを見せています。
1938年竣工の歴史ある洋風建築と、奈良美智や宮島達男といった世界的に評価の高い現代アートコレクションとの組み合わせが、他にはない静謐で知的な雰囲気を創り出しているのです。
作品が置かれている空間ごと感じ取ることで、アートへの理解がさらに深まります。
完全予約制で叶える自分だけの鑑賞時間
この美術館の大きな特徴は、完全予約・定員入替制を採用している点です。
これにより、混雑とは無縁の静かな環境で、一つひとつの作品とじっくり対話するような鑑賞体験ができます。
各回90分という限られた時間と少人数制のため、他の人を気にすることなく自分のペースで館内を巡れます。
作品の前に人だかりができることもなく、細やかな筆致や素材の質感まで心ゆくまで味わえる時間は、日常の喧騒を忘れさせてくれる贅沢なひとときとなるのです。
現代アートと江戸の面影が交差する街並みの魅力
美術館が佇む御殿山エリアは、江戸時代に徳川家の御殿があったことに由来する由緒ある場所です。
美術館で最先端の現代アートに触れた後、一歩外に出ると、歴史の面影を残す趣深い坂道が続いています。
例えば、緑豊かな「八ツ山の坂」や、古い石垣が印象的な「道源寺坂」などをゆっくりと歩けば、洗練されたアートの世界と古き良き日本の風景との心地よいコントラストを肌で感じられます。
この対比こそが、品川・高輪エリアを散策する大きな魅力なのです。
体験レポ、アートと坂を巡る高輪さんぽ半日モデルコース
私が実際に訪れて心からおすすめしたい、週末にぴったりの半日コースをご紹介します。
忙しい日常から少し離れて、アートと建築、そして歴史が交差する高輪エリアを五感で味わう散歩に出かけませんか。
このモデルコースを辿れば、洗練された現代アートに心を動かされ、緑豊かな坂道に癒やされる、豊かな時間を過ごせます。
JR品川駅から緑豊かな御殿山の坂道への道のり
JR品川駅の高輪口を出ると、目の前には大きな通りが広がっていますが、目的地である御殿山エリアは驚くほど静かな空気に包まれています。
都心とは思えない落ち着いた住宅街の雰囲気が、これから始まるアート体験への期待感を高めてくれます。
駅から美術館までは徒歩で約15分ほどです。
第一京浜を渡り、ホテル「フレックステイイン品川」の角を曲がって八ツ山の坂を上っていくルートが分かりやすいです。
坂の途中には三菱グループの迎賓館である開東閣の緑豊かな敷地が広がり、歩いているだけで心地よい気持ちになります。
| ルートの目印 | 特徴 |
|---|---|
| 品川駅高輪口 | スタート地点 |
| 第一京浜(国道15号) | 大きな横断歩道を渡る |
| フレックステイイン品川 | この角を右折して坂道へ |
| 開東閣 | 雄大な緑の敷地が左手に見える |
| 原美術館ARC | 坂を上りきった先にある目的地 |
緩やかな坂道をゆっくりと自分のペースで歩く時間は、忙しい頭の中をリセットするのに最適なウォーミングアップになります。
特徴的な建築と現代アートコレクションの融合
「原美術館ARC」の建物は、もともと1938年に実業家の個人邸宅として建てられたモダニズム建築です。
この言葉は、装飾を排し、機能性を重視した20世紀初頭のデザイン様式を指します。
この建物は、円を描くようにカーブした展示室や、中庭に向かって大きく開かれた窓が特徴的で、展示されている現代アートと空間が見事に響き合っています。
単に作品を並べるのではなく、建築そのものがアートの一部として機能しており、どこを切り取っても絵になる空間が広がっています。
| 注目ポイント | 建築とアートの融合 |
|---|---|
| 曲面の壁 | 作品を柔らかく包み込むような展示空間 |
| 大きな窓 | 差し込む自然光が作品の表情を刻々と変える |
| 天井の高さ | 開放感があり、大型のインスタレーションも映える |
| 邸宅の面影 | バスルームやサンルームなど、かつての生活空間に作品が佇む面白さ |
訪れる人は、作品だけでなく、この唯一無二の空間そのものを体験するために足を運ぶのです。
光が差し込む展示室と注目の作品
この美術館の最大の魅力は、空間に豊かに取り込まれる「光」です。
特に中庭に面したサンルームのような展示室は、差し込む自然光が作品の見え方を時間帯によって変化させます。
原美術館時代から引き継がれたコレクションには、世界的に評価の高いアーティストの作品がそろいます。
例えば、奈良美智のどこか切なげな表情の作品や、宮島達男のデジタルカウンターが明滅を繰り返す作品は、この邸宅の記憶と対話するように静かに佇んでいて、見る人の心に深く語りかけてきます。
| 主なコレクション作家 | 作品の特徴 |
|---|---|
| 奈良美智 | 無垢でありながら強い意志を感じさせる人物画 |
| 宮島達男 | 「生」と「死」を数字の明滅で表現する作品 |
| 杉本博司 | 時間や歴史をテーマにしたコンセプチュアルな写真 |
| 李禹煥(リ・ウファン) | 「もの派」を代表する、石や鉄板を用いた作品 |
作品と空間、そして光が一体となった鑑賞体験は、忘れられない記憶として心に残ります。
中庭を望むカフェ「Café d’Art」での豊かな時間
展示をひと通り鑑賞した後は、中庭に面したカフェ「Café d’Art」で休憩するのがおすすめです。
ここは鑑賞の余韻に浸り、静かに自分と向き合うための特別な場所です。
席に座ると、大きな窓の向こうには緑豊かな中庭が広がり、都心にいることを忘れさせてくれます。
かつて人気だった作品をモチーフにした「イメージケーキ」の提供は現在ありませんが、丁寧にハンドドリップで淹れられたコーヒーを味わいながら過ごす時間は、何物にも代えがたい贅沢なひとときです。
- コーヒーや紅茶で一息つく
- 中庭の彫刻を眺めながら物思いにふける
- 鑑賞した作品について手帳に書き留める
- スマートフォンはしまって、窓から入る光を感じる
慌ただしい日常から離れ、アートの世界に浸った感覚をここでゆっくりと自分のものにしていく時間が大切です。
美術館鑑賞後に巡る高輪の歴史的な坂道たち
美術館を出た後、すぐに駅へ戻るのはもったいないです。
ぜひ、周辺に残る江戸の面影を感じさせる坂道を散策してみてください。
現代アートに触れた後の歴史散策は、その対比が面白く、知的な好奇心を刺激します。
美術館の脇を通る「潮見坂」は、かつて坂の上から海が見えたことからその名がつきました。
また、近くにある「道源寺坂」は、古い石垣が残り、歴史の重みを感じさせます。
このエリアの散策には、約60分を見ておくとよいでしょう。
| 坂道の名前 | 特徴・見どころ |
|---|---|
| 八ツ山の坂 | 美術館へ向かうメインルート、緩やかで緑が多い |
| 潮見坂 | 開東閣の脇を通る、かつては海が見えた風光明媚な坂 |
| 道源寺坂 | 泉岳寺方面へ下る坂、古い石垣に歴史を感じる |
| 桂坂 | 江戸時代の大名屋敷に由来する、閑静な雰囲気 |
洗練されたアート鑑賞と、歴史を感じる街歩きを組み合わせることで、高輪エリアの奥深い魅力を存分に味わえます。
原美術館ARC訪問前に押さえるべき基本情報
原美術館ARC(旧原美術館)は、その歴史的な建築空間と現代アートを心ゆくまで堪能できる特別な場所ですが、訪問前にいくつか知っておくべき大切な点があります。
特に、完全予約・定員入替制である点は、計画を立てる上で最も重要な情報です。
所在地と品川駅からのアクセス
原美術館ARCは、東京都品川区北品川の「御殿山」と呼ばれる閑静な住宅街に位置しています。
都心にありながら、落ち着いた雰囲気の中でアートと向き合えるのが魅力です。
最も一般的なアクセス方法はJR品川駅からの徒歩で、高輪口から御殿山の緑を感じながら歩いて約15分で到着します。
緩やかな「八ツ山の坂」を登る道のりは、美術館への期待感を高めてくれるでしょう。
| 交通機関 | 最寄り駅 | 所要時間 |
|---|---|---|
| JR線 | 品川駅(高輪口) | 徒歩約15分 |
| 京浜急行線 | 北品川駅 | 徒歩約8分 |
駅から少し歩く時間も、街並みを味わう散策の一部として楽しむのがおすすめです。
開館時間と休館日、入館料金一覧
訪問の計画を立てる際は、開館時間や休館日を事前に確認することが大切です。
特に、最終入館時間は閉館の30分前である15:30なので注意しましょう。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 開館時間 | 11:00~16:00(入館は15:30まで) |
| 休館日 | 月曜日(祝日の場合は開館、翌平日休館)、年末年始、展示替え期間 |
| 入館料(一般) | 1,500円 |
| 入館料(大高生) | 1,000円 |
| 入館料(小中生) | 500円 |
展示替え期間など、不定期の休館もあるため、お出かけ前には必ず公式サイトで最新の情報を確認してください。
注意点、公式サイトからの事前予約は必須
この美術館を訪れる上で最も注意すべき点は、鑑賞が「完全予約・定員入替制」であることです。
これは、決められた時間枠の中で、限られた人数の来館者だけが鑑賞できる仕組みを指します。
予約は公式サイトからのみ可能で、希望日の1週間前の午前11時から受付が開始されます。
この仕組みのおかげで、混雑することなく、静かな空間で作品や建築とじっくり向き合う豊かな時間を過ごせます。
予約なしで直接訪問しても入館はできません。
週末など人気の時間帯はすぐに予約が埋まってしまうこともあるため、訪問を決めたら早めに公式サイトの予約状況を確認することをおすすめします。
写真撮影のルールと鑑賞の所要目安
館内の思い出を写真に残したい方も多いと思いますが、撮影にはルールが定められています。
作品保護の観点から、一部撮影が許可されていない作品もあるため、現地の表示に従いましょう。
展示をじっくり鑑賞する時間は、おおよそ60分から90分程度を見ておくとよいです。
その後、中庭を望むカフェで休憩したり、建物の細部を眺めたりする時間も考慮すると、より充実した滞在になります。
| 撮影ルール | 可否 |
|---|---|
| 撮影が許可された作品の撮影 | ◯ |
| フラッシュ、三脚、自撮り棒の使用 | × |
| 動画の撮影 | × |
ルールを守って鑑賞することで、自分自身も周りの人も気持ちよく過ごせます。
アートと建築が織りなす静かな空間を、心ゆくまで味わってください。
群馬「ハラミュージアムアーク」との関係性
「ハラミュージアムアーク」とは、もともと原美術館の別館として1988年に群馬県渋川市に開館した施設です。
緑豊かな伊香保グリーン牧場に隣接しています。
2021年に品川の原美術館が建物の老朽化を理由に閉館した際、約1,000点に及ぶ所蔵コレクションはすべて群馬のハラミュージアムアークへ移管・集約されました。
現在、品川のこの建物は期間限定のサテライトスペース「原美術館ARC」として運営され、コレクションの中からテーマに沿った作品が展示されています。
品川では歴史的建築とアートの調和を、群馬では広大な自然環境の中で多彩なコレクションを楽しめます。
それぞれ異なる魅力を持つ二つの施設を訪れてみるのも面白いでしょう。
まとめ
品川にあった原美術館の跡地は、完全予約制でアートや建築と静かに対話できる特別な空間へと生まれ変わっています。
この記事では、洗練されたアート鑑賞と、江戸の面影が残る高輪の坂道散策を組み合わせた週末の過ごし方をご紹介しました。
- 完全予約制で実現する静かな鑑賞時間
- 昭和初期の建築と現代アートが響き合う空間
- 江戸の面影が残る高輪の坂道を巡る散策
忙しい日常から離れて心豊かな時間を過ごしたいと感じたら、まずは公式サイトから訪問予約をして、あなただけのアート散歩に出かけてみませんか。